第695回男塾「特別会計という闇会計」官僚の腐敗編 後編
天下りに使われる特別会計
前回は厚労省による「しごと館」のあきれた不正と経営感覚のなさを指摘しつつ、官僚の企画する官製事業がいかにずさんな運営をしているのかを収支を通じて見て来た。これにはまだまだ続きがある。彼らがつくりだした赤字を国民や企業が納める雇用保険料によって補填することの罪悪感などは微塵もないのだろうが、その無責任性は「国民の負担」となって跳ね返って来ることになったのは言うまでもない。
今回取り上げる「雇用促進事業団」による犯罪に近い施設事業の大失敗の数々の事例は、官僚組織は何が起ころうとも遮二無二、組織防衛を図るため、あらゆる改革はなされることなどなく、単なる見せかけに終わる宿命にあり、最期は看板の書き換えによって生き残ることを我々に教えてくれる。「しごと館」の顛末は「雇用・能力開発機構」のたどる長い軌跡が官製事業の共通の病理を示すものであって決して特殊な事例ではないということ。それは氷山の一角に過ぎない。だから罪の意識も生まれない。
組織をあげて幾度も生き残るその様は、まさしく「ゾンビ法人」と呼ばれるのにふさわしい歴史をたどっている。彼らは何をしでかしても、不死鳥ではなくあの醜いゾンビの如く蘇り、再び悪事に手を染める。「雇用・能力開発機構」というゾンビ法人の前身は「特殊法人雇用促進事業団」である。そしてこの事業団は旧労働省の方針を受け、企業とサラリーマンら被雇用者が折半で治める雇用保険料や、企業が全額負担する労働保険料を財源に、全国各地で「ハコモノ」造りを推進していく。
その結果、それはそれは恐ろしい額の損失を招く未来をつくっていった。そのハコモノは「勤労福祉施設」と呼ばれた。聞いたことがあることだろう。旧労働省の官僚は雇用保険・労災保険料の積立金を自ら管理・運用する特別会計「労働保険特会」から資金を引き出して湯水の如く使い、何と雇用保険で「2,070施設」、労働保険で「77施設」、「計2,147施設」もの「勤労福祉施設」を建設したのである。