2025/08/26

第692回男塾「与論島での人生の発見」3

エッセイ
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第692回男塾「与論島での人生の発見」3



愛すべき男トシ
与論島に滞在する期間はトシとは一日も欠かすことなく午後から皆田海岸で過ごした。午前中は執筆し午後から海岸を目指しスクーターで移動するのが日課であった。様々な話をしたが彼の言葉には一貫性があり、金太郎飴のようにどこを切ってもトシはトシであり続けた。ぶれない、飾らない、自由奔放、それでいて人に対して限りなく優しい、それがトシだ。


入れ替わり立ち代わり様々な人が海岸に出入りするも、まるで皆田の番人のように、或いは総長や牢名主のようにトシは常に存在し全体を見張っている。ミスター与論までいかないかもしれないが、「ミスター皆田海岸」であることは自他ともに認めていることだろう。


トシは皆田海岸をこよなく愛し、海岸に来る人々を迎え入れ、話しかけ、喜ばし、送り出している男だ。私がこの海岸に帰って来たのも「トシ」と「カズキ」による。その人懐っこさと、一直線の生き方と、男気と、島的利他の行動は、並外れている。いや桁違いと表現した方が良いかもしれない。今まで出会ったことのないタイプの男だった。


何せ欲がほとんどない。人間の三大欲は「食欲」「睡眠欲」「性欲」である。いずれも自己保存本能に基づく「生存欲」であるのだが、ところがトシは三大欲をほぼほぼ克服している稀有な人間だ。一日三時間睡眠、飯は何でもよくモズクをつまむ程度、どうやら性欲もたいしてないようだ。自らの欲が希薄な人間の特徴は人に対する関心が深くなることである。かくして皆田海岸を根城にして多くの人と触れ合う生活を選んでいるのだろうと思う。

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