2024/06/05

第648回男塾「安藤百福は偉い」3

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第648回男塾「安藤百福は偉い」3


いよいよ売り出し!阪急百貨店での試食販売の成功
6月になると大阪・梅田の阪急百貨店の地下食料品売り場で試食販売をした。安藤にとっては初陣のようなものである。小麦粉と食用油にまみれた作業服を脱いで、2年ぶりにスーツに着替えた。親戚の女性や泉大津で働いていた若者が何人か手伝いに来てくれた。「さあ、お湯をかけて2分で出来上がるラーメンですよ」 と言っても客は半信半疑である。


目の前でラーメンの入ったどんぶりにお湯を注いで蓋をする。2分経って出来上がったらラーメンの上に刻みネギをあしらって出すと、あっけにとられている。「 あら、ほんまのラーメンや」。 その後は集まってきた主婦が試食しては買っていく。持参した500食は瞬く間になくなった。誰が言い出したのか、後にチキンラーメンは「魔法のラーメン」と呼ばれるようになった。


百福は客の反応をつぶさに観察しながら、「この商品は売れる」という確かな手応えをつかんだ。この時百福は48歳だった。「遅い出発ですね」とよく言われるが、いつも「人生に遅すぎるということはない。50歳でも60歳からでも新しい出発はある」と答えた。55歳で株式会社日本一を創業させた筆者も「本当にその通りだ」と共感する。


「振り返ると、私の人生は波乱の連続だった。両親の顔も知らず独立独歩で生きてきた。数々の事業に手を染めたが、まさに七転び八起き、浮き沈みの激しい人生だった。成功の喜びに浸る間もなく、何度も失意の底に突き落とされた。 しかし、そうした苦しい経験が、いざという時に常識を超える力を発揮させてくれた。即席麺の発明にたどり着くには、やはり48年間の人生が必要だった」


「七転び八起き」「転んでもただでは起きない」「人生に遅すぎるということはない、何歳からでも出発できる」という精神は、まさしく百福という大成功を収める人格の看板になる箴言である。百福のような強靭な意思、忍耐力、諦めない心、根性、未来志向は、人生を全うするうえで、おそらく全ての人が何時か身につけなければならない精神力ではなかろうか。(筆者談)

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