2024/05/24

第646回男塾「安藤百福は偉い」2

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第646回男塾「安藤百福は偉い」2



ラーメン事業の原点
「世の中を明るくするにはどうすれば良いか」そう考えると事業のアイデアは汲めども尽きぬ泉のように湧き上がった。「中交総社」を設立すると同時にかねてから抱いていた「日本の復興は食から」という思いを実行に移すため「国民栄養化学研究所」を設立した。栄養食品を開発しようと考えたのである。町ではまだ栄養失調で行き倒れになる人が後を絶たなかった。すいとんや雑炊が食べられればいい方だった。人々は芋のつるまで食べて飢えを凌いでいた。


国から配給される食料では足りず闇市が繁盛した 。昭和22年東京地裁の山口判事が闇食料の購入を潔しとせんとして栄養失調で亡くなるようなことが起きるような時代であった。阪急電鉄梅田駅の裏手は一面焼け野原でそこに 闇市が建った。


寒い冬の夜のことだった。偶然そこを通りかかると20~30mの長い行列ができている。 一軒の屋台があって薄明かりの中に温かい湯気が上がっていた。ラーメンの屋台だった。 粗末な衣服に身を包んだ人々が寒さに震えながら順番が来るのを待っていた。一杯のラーメンがこんなに人々の気持ちを引きつけている。


温かいラーメンをすすっている人の顔は幸せそうな表情に包まれている。「日本人は本当に麺類が好きなんだ」 百福は屋台の行列を見て漠然とではあるがそこに大きな需要が暗示されているのを感じた。 これがラーメンという食べ物を心に刻んだ原風景となったのである。

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