第630回男塾「イスラエルとパレスチナ 人類史上最もやっかいな問題」7~イスラム教編~
イスラム教とはどんな宗教なのか
イスラエルとパレスチナのその後の歴史を追っていく前に、両者間の領土問題と同等、いや、それ以上に両者を分かつ宗教問題に言及しておく必要があると思う。両者間の宗教に言及して行く過程でどうしてもキリスト教にも言及せざるをえなくなるだろうが。ユダヤ人はユダヤ教を信仰し、パレスチナ人はイスラム教を信仰している。中東諸国のアラブ人は全てイスラム教国であり、例外はない。中東地域で唯一の異教徒国はイスラエルのみである。
ユダヤ教もイスラム教も共に一神教であるだけに宗教的寛容性はなく、「我以外神なし」の立場にいるためお互いに相いれる余地はない。正確に言うとイスラム教はユダヤの神を認めているがユダヤ教は後から来た宗教であるイスラム教の神を認めていないという構図になっている。両者は信仰する宗教の違いでも反目している。そもそもヤーヴェの神がアブラハムに「カナンの地を与える」という約束をしたことが今日まで続く諍いの原因になっている。つまり根本的には宗教絡みの反目であると言えよう。
ではイスラム教とはいったいどのような宗教なのか、中東全体を理解していくうえで知っておく必要がある。日本人でイスラム教信者はほとんどいないため、イスラム教を知る人は少ない。そこで今回はイスラム教とは何なのかを探求していく。無神論の日本人には宗教問題に疎い面が見受けられるが、世界は宗教で動いている。宗教を知らずして世界を知ることはできない。少なくともイスラム教、仏教、キリスト教の三大世界宗教の教えを知らずして、世界を語ることなど本当は到底できないことだと思う。
イスラム教の開祖は言わずと知れた「マホメット」である。ところがアラブでマホメットなどと呼称する人はいない。「ムハンマド」である。マホメットと言うのは、ヨーロッパ人が聞き取って書き記した音であり、アラビア語ではムハンマドと言うのが正規の呼び名である。イエス・キリストはギリシャ語発音由来で、英語発音ではジーザス・クライシストになる。しかし元々のヘブライ語ではイエッシュアと発音する。