第25回男塾「イスラエルとパレスチナ 人類史上最もやっかいな問題」3
世界に散らばるユダヤ人
イスラエルを追われたユダヤ人は、北アフリカを渡ってトルコを抜けてヨーロッパに移住した。彼らは行く先々で独自のコミュニティを形成していく。世界中いたるところに「チャイナタウン」と呼ばれる中華民族のコミュニティがあるが、ああしたものだ思えばよい。そのコミュニティは繁栄することもあったが、差別、強制改宗、暴力、そして追放の憂き目にあうことが多かった。
キリスト教徒の支配するヨーロッパではユダヤ人は究極のアウトサイダーであり、よそ者であった。カトリック教会にとって、ユダヤ人は神学的に大きな問題であった。ユダヤ人は全員がユダヤ教徒であり、キリスト教徒からするとキリスト教という唯一真の宗教を否定する異端者と見ていた。だから当然、教会はユダヤ人を敵視する立場をとっていた。
なにせ、ユダヤ人はキリストを否定しただけでなく、実際に十字架にかけて殺しているのだから、神学的には敵である。しかも今もイエスを信じることがないために、ヨーロッパのキリスト教徒からすると異教徒中の異教徒である。その結果、ベニスの商人のシャイロックに象徴されるように、ユダヤ人は西欧社会では嫌われ迫害と暴力が繰り返されることとなった。救世主を屠った民族は幸せになれないということであろうか。
ユダヤ人は金貸しや商人のような特定の職業に就くことしか許されず、特定の地域に追いやられた。ベネチアではユダヤ人が強制的に住まわされた地域を「ゲットー」と呼ばれた。どこかで聞いたことがある呼び名であろう。現代ではその名称は貧困にあえぐマイノリティーが暮らす街の一角を意味する言葉となっている。