第618回男塾「景山民夫は知っていた」3
景山民夫さんが伝えたかったことはこうだ
「本当はこの短編小説には解説があった方がいい」と思ったのが今回私が書きたくなった動機である。小説なのでまどろっこしい説明はないので、霊的見識力がない人にとっては、景山さんがいつものように面白おかしく書いているだけ、とスルーしてしまいがちなところを、「いや、しばし待たれよ! この小説は景山さんお得意の『おちゃらけ』でも何でもなく、現代人の認識を超えた出来事が起きていることを景山さんは伝えたかったのだよ、これは小説ではなく現実なんだよ」と、解説する人がいるのではないか、と私は思ったわけだ。
死んで25年もたったある作家の本を読んで、そんなことを思う人などめったにいるものではなく、そう思った以上、私には責任があり使命が発生していると考えるタイプなので、こうして頼まれてもないのに解説をして骨を拾ってやっている、と書いたら直木賞作家に怒られるか。
私が書斎で「ティンカーベル・メモリー」という本を手にしてから再読したのがきっかけになり、弾みがつき生前の景山さんのバックナンバーの本を読み進み、遂には「地獄」という未だ読んでなかった短編集に出会う仕掛けが用意されていた。そしてとうとう「小説・地獄」の解説をしている自分がいる。そのように思えてならない。景山さんはこれくらいの仕掛けはする人だ。いや霊だ。