第617回男塾「景山民夫は知っていた」2
景山民夫著 「ハイランド幻想 『地獄』」から
気がついたら、俺の足元に俺が倒れていた。
耳と鼻から大量の血を流してアスファルトの上に倒れているのは 、どう見ても俺自身で、しかし、それを見下ろしている俺も、 手足や衣服を眺めてみると、倒れているのと同じ人間であるとしか思えなかった。 まるで落語の「粗忽長屋(そこつながや)」の世界だな、と思った瞬間に、ものすごい力で俺の体が、下へと引っ張られた。