2016/07/11

第198回男塾「北朝鮮の㊙機密ファイルに迫る」後編

国際政治
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第198回男塾「北朝鮮の㊙機密ファイルに迫る」後編



「監視と粛清の恐怖政治の実態」
「このままでは身辺の安全確保が担保出来ない。これは深刻な事態だ。直ちに対策をたてろ。全体的に忠誠心に問題が出ている」。
かつての金日正、金正日時代までは忠誠心に問題が無かった。恐らくそれを一番知っているのは、金正恩氏、及びファミリーの人たちであろうと、北朝鮮から流出した1万2000ペイジ及ぶ機密ファイルには記されている。

その結果、金正恩氏が指導者になった翌年の2012年。軍人一人ひとりに対する監視の目を更に強硬にしていくことが、生々しく記されている。
金正恩氏は、国家安全保衛部(秘密警察)を視察し、秘密警察や組織部に発した命令は「軍内部の全ての動向を最高司令官の、私(正恩)に集めるシステムを確立せよ」「例え、山奥に針一本落ちる音ですら、私に聞こえるようにしろ」と全軍新たな指示が出された。

粛清裁判を行う「監視報告書」
その命令の下に作成された膨大な個人の監視報告書。ファイルから見つかった10数万とも言われる軍幹部、その一人ひとりの思想や行動発言などが、徹底して調べ上げていた。不穏な行動を取る可能性がある幹部は、氏名がリスト化され、最高司令官正恩氏に報告される。
そしてリストの中から、排除を召し出される者が相次ぐようになった。


それは粛清だ。

ファイルには、粛清の裁判が行われる軍人会館施設に関する資料も含まれていた。
かつて北朝鮮軍部に所属していたチェ・チョンピン氏は、自らが目の当たりにした粛清の裁判について語り始めた。
軍では見せしめの裁判として公開で行う。
「私が見た人は、銃殺の対象となり、手に鎖をかけられ引きずり出されました。階級章を檀上でむしり取られ、縛りあげられました」。
また、厳罰を求める罵声があげられるという刑罰は、その時々で刑罰の内容が異なるという。軽い罪であっても、死刑になる事もしばしばであったという。このように公開裁判によって、百人、千人の兵士に恐怖を植え付けるのが目的だ。
また粛清の対象は(元国防委員チンン、リンテリ氏、2013年12月粛清)軍の最高幹部まで広がっていく。これまでこの実態は、公開されたわずかな映像や、公の場から姿が消えたという事から推測するしかなかったが、しかし今回の機密ファイルには、ベールに包まれていた粛清の量や経緯について記されていた。詳細が分らなかったある高級幹部、人民総参謀長リ、ヨンキの粛清の深層が、始めて明きらかになった。
若き金正恩氏を支える事で、軍内に大きな影響力を持っていたヨンキ氏(元人民武力相)はある日突如として姿を消したことから、様々な憶測が飛び交わっていた。
情報からすると、金正恩氏はピョン、ヨンチョル氏(2015年粛清)に対して、指導部に逆らった反党・反革命分子としてに粛清を命じていたのだ。そして、その一週間後、絶大な力を持っていた総参謀長リ、ヨンキは、軍内で「野郎」呼ばわりされるようになっていた。この国では、評価が一夜で変わる。誰も枕を高くして寝ることなど出来ない。

金正恩一人による「恐怖による支配」それが北朝鮮の実態だ。

「恐怖による忠誠心」
粛清の理由は、正恩氏の許可なくパレードに参加した軍部隊を、勝手に動かしたというものだった。要するに、金正恩導師の御考えに逆らって、リ、ヨンキ野郎の指示に従い優柔不断にも部隊が勝手に動いたという事例があったことを裁かれた。
軍は最高司令官の命令が無ければ、例え、頭に雷が落ちても、足元で爆弾が爆発しても勝手に動く権利はないのだ。

またそれ以外にも、軍に損害を与える行為を行った場合。例えば艦船の破損。党の方針に疑問を呈した者、人工衛星発射に疑問視した者、次々と粛清の対象になっていった。
恐怖による忠誠心を軍の隅々まで行き渡らせようとした金正恩氏。その政策は組織の統制に繋がっていったのか?…
かつて北朝鮮の砲兵部隊で小隊長を務めていた、脱国者カン、ギョンス氏(仮名)は、始めは正恩氏が国を変えてくれるものと期待したが、だが、その強硬な姿勢に、次第に不信感を抱くようになったという。
やること成すこと全てが、命令通りにやらなきゃ気が済まない金正恩氏。なぜ万歳をするのか?それは事前に練習させられ、正恩氏が現れる瞬間に熱狂的に万歳をやれと…声がかれるまで訓練させられたという。
万歳をやらないと、即刻?首をはねる。処刑されるということだ。たったそれだけで、首領への反発として殺されるのである。
結局、金正恩氏がひいた恐怖政治は、多くの脱国者を生む事になった。指導者の疑問を呈したとして逮捕状が出た幹部は、自らの命を守るため、妻と一人の娘を残し3年前に韓国へ脱出した。しかしその後、残された家族には恐怖が襲うこととなるのだが・・・。

金正恩氏が最も恐れる情報とは?「国外情報流入」
北朝鮮の内幕を暴露した機密ファイル・・・・・・軍の統制を獲得する正恩氏は、更なる課題に直面することになる。
国外からの情報流入は、金正恩を怯えさせている。リビアのカダフィ大佐が部下に密告され殺された情報には、特に敏感であった。インターネット経由で海外の情報が大量に流入してきている。情報の流入は軍にも起こり、不正アクセス者は摘発され処刑されている。
遂には、「リビア・カダフィ大佐、自国の兵に殴り殺された不純映像を観た者は厳罰に処す」、このような指令が発せられた。
正恩氏は、この情報に特に神経をとがらせていた。自分とよく似た独裁者の未来を垣間見たのだろう。
「敵国が我が軍を内部から変質瓦解させるため悪らつで卑劣な謀略策動を強化している」。
敵のまき散らした卑劣な情報に軍人が汚染されてしまえば、思想の純白制を保てなくなり、忠実な姿勢が失われると見たのだ。

「核開発の真の理由とは」
長距離弾道ミサイル発射や、核実験で国際社会を揺さぶり続ける金正恩体制。
なぜこれほどまでに核開発にこだわるのか?核開発に関する知られざる思惑の文書も見つかった。核の保有は、「軍事費を抑え、少ない費用で経済発展と国防強化が出来る、最も現実的な路線である」と記されていた。
36年ぶりの党大会では、金正恩は、核保有国の地位を内外に宣伝した。「我々は、核抑止力を持つことで、米国の戦争挑発策動を粉砕し、朝鮮半島の平和と安全を守護している」と述べた。これまで北朝鮮の核開発は、アメリカへの交渉のテーブルに引き出すための、外交カードとしての側面が注目されて来た。
しかし、機密ファイルでは、もう一つの目的が示されていた。

核開発は、いわゆる国内の統治のために、必要な手段であるというものだった。
「我々の核の力を強化し、軍の思想教育を強化すれば、全ての軍人が高い緊張状態を保ち、民族最大の念願である祖国統一を成し遂げられる」これが狙いてあったのだ。
これについて、ソ連時代から外交官として、平壌に駐在し、北朝鮮との太いパイプを持つ、ケオルキ、トロライヤ氏(現、モスクワ国際関係大学教授)は、「核開発には実は国内統率を後押しする狙いが含まれている」と・・・。「外交交渉を求めても、アメリカのオバマ大統領は振り向かない。韓国のパク・クネ大統領も対手にしない」。その事を北朝鮮が良く分っている。だから、「核開発は、正恩氏の実績を示す国内向けのプロパガンダでもある。」と分析する。
北朝鮮の内幕をさらけ出した機密ファイル。鈴木教授の基に5年前まで在韓米軍情報将校を務めていた、ロジャーカバゾス氏から、新たな発見があったと報告があった。
それは、USBの中に、軍の機密文章とは異なる機密にファイが見つかったと言うのである。それは脱国者が家族に残した、たった5行の手紙のようなものだった。
そこには「おねぇーさんへ…家の事はお願いします。最後に、妻を私のように愛して下さい。感謝します。永遠に…」と書かれていた。
この手紙の作成者は、機密ファイルを管理していたあのYlmfだった。このデータの交信日は、2014年1月、台湾でUSBを受け渡された2カ月前だった。
鈴木教授は、ylmf自身が身の危険を犯して、機密ファイル流出に関わった一人ではないかと考えている。
これだけの秘密ファイルが国外に流出したからには、北朝鮮の動きも大きく変化してくる事は間違いない。12000頁の機密ファイルが明かした表の姿とは異なる、北朝鮮の実像が浮かびあがったのは、軍の統制を繋ぎ止めながら歩む指導者(正恩)と権力抗争の危うさがうかがえる。膨大な機密ファイル流出、それは、この国の更なる変化を表している。
  
結局、北朝鮮の「終わりの始まり」が、具体的に見えて来た。戦争をして食料の調達が出来るかどうか?韓国を水爆で脅し、韓国の首都ソウルを電撃で一気に攻め込み、食糧を現地調達する。そのくらい事は考えているかも知れない。
しかし、そうなれば、第二次朝鮮戦争は避けられず、世界のリーダーたちを敵に回して戦うほどの力量が金正恩氏あるのかどうかだ?
それとも若さゆえに自惚れが過ぎて、怖さを知らずで、何をしでかすかわからないかもしれない。
また経済的も外交的にも追いつめられ、内部の氾濫の恐怖の余り、突然発狂し、北朝鮮を本気で滅ぼす前に、そこら中に核を打ちこむ可能性だってある。
今、北朝鮮の挑発によって、韓国も核武装をしようかと云う声も50%を超え60%に近付いている。韓国が核武装したら、日本に核武装するなとアメリカも言えなくなる。
そうなる前に、北朝鮮の残された道は、資本主義国家として、自由諸国の仲間入りをするために、核の放棄とピョンヤンの無血開城以外、北朝鮮の生きる道はない。

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